2010年03月16日

津川雅彦はスルーしますた

■「親が子供に伝えたい「環境」の授業 ――命はつながっている」

親が子供に伝えたい「環境」の授業  ――命はつながっている親が子供に伝えたい「環境」の授業 ――命はつながっている

角川グループパブリッシング 2009-01-31
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★★★★☆

 映画「旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ」の監督・津川雅彦と旭山動物園園長(当時)・小菅正夫の対談本です。
 そのタイトルや装丁からいま流行りの「エコ」的な内容についての本かと思ったら思いっきりいつもの旭山動物園本でした。つまり「命」とはなんぞや。野生動物とは何か、地球という自然の中で生きるとはどいういうことか。

 実は内容にはまったく期待していませんでした。
 なにしろ映画がつまんなかった。その映画の監督である津川雅彦が何を言おうと知ったことか。最初からそういう態度で読んでいたわけで、失礼な話です。役者としては大好きなんだけどなあ津川さん。まあいいか。

 実際、対談は津川雅彦が感情的な思い込みの強い発言を繰り返すんです。小菅氏の発言と脈絡なく日教組批判とかね。
 それでもこの本は読んでよかった。小菅氏の言葉の一つ一つがどしんと響く。


・自然界はすべてなんらかの動物によって占有されている空間である。

・自然界に「弱肉強食」は存在しない。向こうから相手が来たらこちらはよけるという関係である。

・ペットを放すと在来種を駆逐してこの関係を壊す。ペットを捨てることは殺すことよりひどいこと。

・人間は、一見可愛くて、人間に直接悪影響がないと思いこんでいる場合は動物の味方をするが、自分に危険が迫ると違った判断をする。礼文島でエキノコックスが流行ったとき「島にいるイヌを一匹残らず始末してくれ。」と住民は主張した。

・「野生動物が絶滅してなぜ困る?」と質問した若手医師がいた。命は連綿と繋がっている。人間も動物ももとは同じ生物だった。それがいつか枝分かれした。もともとが同じ私たちの一方が価値があって、もう一方が価値がないと考えるのはなぜか。実は命のことについてこれまで考えたことがなかったからじゃないか。

・生態系はジグゾーパズルのようなものだ。一つ一つのピースを見てもその役割はわからないが、全体を当てはめたらピタリひとつになる。ピースの一つ一つが安定した生態系に寄与している。パズルのピースが1個抜けたら絵にならない。

・人間のピースだけが大きくなっているなら単純でつまらない1枚絵だ。1枚だと火が付いたらぜんぶが一気に燃える。

・生きているものは汚くない。生きているということはバイ菌と共生しているか戦っているかのどちらか。つまり自分がどれだけ「汚い」か。

・動物の好き嫌いは子どもに伝染する。とくに母親は子どもの前では嫌いな動物にも平然と接すること。「嫌いの連鎖」を断ち切ることが命を大事にし、他人を思いやる心を育む。

・嫌いな理由の多くは「わからない」「なんとなく」「生理的に」というもの。よく知ればたいがい嫌いじゃなくなる。人間関係と一緒。

・チンパンジーやヒトにとって生殖は本能じゃない。生まれてから学べる可能性のあるものは、本能から削除されている。本能を減らすことでできる遺伝子の空白部分が多くなるほど、新しいことを書き込める。

・人間は異端を認める唯一の動物である。これが叡智だ。



 小菅氏は本書の最後で「動物園が地球を救う」と言いました。私はこれは言い過ぎだとは決して思わない。
 私自身も、たまたま、本当にたまたま北九州市の片隅にある到津の森という動物園の年間パスポートを買ったことで、動物に興味を持ちました。やがてその興味は彼らの生きる場所の植物や、そこで生きるムシに広がりました。
 そしていまや世の中のすべてが、路傍の雑草だって興味の対象となって、いつもどこでも楽しくてしょうがない。通勤中も夢の世界にいるかのよう。起きれ。

 この素晴らしきおもしろ世界と、私はずっと付き合っていきたい。
 小菅氏の「動物園が地球を救う」って、たぶん、こんな気持ちになれる場所ということなんでしょうね。毎日楽しいよ。


関連記事→「戦え動物園」(おもしろすぎる動物本紹介)「旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ」(映画感想)

生きる意味って何だろう?  旭山動物園園長が語る命のメッセージ (角川文庫)生きる意味って何だろう? 旭山動物園園長が語る命のメッセージ (角川文庫)

「旭山動物園」革命―夢を実現した復活プロジェクト (角川oneテーマ21) 旭山動物園園長が語る命のメッセージ 夢の動物園  旭山動物園の明日 動物と向きあって生きる  旭山動物園獣医・坂東元 (角川文庫) 戦う動物園―旭山動物園と到津の森公園の物語 (中公新書)

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2010年02月26日

followを増やせ

■「動物の値段―シャチが1億円!!??」

動物の値段―シャチが1億円!!??動物の値段―シャチが1億円!!??

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★★★★☆

 とにかくいかがわしい本ですね。
 動物商、ブローカーである筆者が、自身が売買した経験に基づいて動物のあれこれを記した本です。ホラいかがわしい(笑)
 命を商材とするブローカーの本で、筆者自身も正直どこまで真っ当な人間かわかりません。「動物の値段」というタイトルもちょっとあざとい気がします。
 裏表紙に動物の値段がしっかりと記されているのも下品と言えば下品。たとえば「ライオン45万円、サイ120万円、ゾウ3,000万円、ナマケモノ65万円」って。いやらしいなあ。

 だけどね、とにかくおもしろい本でした。

 動物商ですからね、観点が現実的なんです。
 仕入れから在庫管理、そして納品という流れの中で商品を扱うわけですけど、その商品ってのが生きた動物なわけです。つまりナマモノ。しかも体調とか状況がどんどん変わりうるナマモノですから、配送や在庫管理の話も一筋縄ではいかないんですね。
 商品を納めておく箱のサイズとか耐久度とか、食事とか、排泄とか、生々しい話の目白押しです。

 雑食だから糞の臭いがこう臭いだのああ臭いだの、鳴き声が五月蠅いからだの、実際に飼うにはどこに気をつけるべきだの、すごいですよ。イヌネコの話じゃないですからね。トラだのシャチだのキリンだのの話です。
 動物って生き物なんだよなあという当たり前に改めて納得しました。

 それでこの本を読んだあとどうなるかって言うと、動物見るのがとっても楽しくなるんですよね。
 こいつの口臭はすごいらしい。飼育員も大変だよなつって、知ってるから想像が広がる。

 動物や虫を見るとき、私たちは実は生き物として見てないことも多いと思うんですよ。
 「種」として見るというか、人間ではないというか、自分とは異世界のモノとして見ている。
 でも違うんです。彼らも私たちと同じ地平で生きている生温かい存在なんです。そのことに改めて気付く。要するに知り合いになるんです。

 知り合いだから彼らのやることなすことががちょっと気になったりする。知り合いだから彼らの周囲の環境までもが気になったりする。

 動物の価格と取引の関係の話など、業界的な裏話も想像を絶するほどおもしろい。
 でもそれだけの本じゃない。読んだあとの人生がおもしろくなる。

 世界はよく見りゃ動物、生き物だらけですからね。生き物がみんな知り合いならみんなフォローしちゃえばいい。
 ツイッターだってね、フォローが多いほどおもしろいでしょう。それとおんなじだ。おんなじか?


関連記事→「みんなが知りたい動物園の疑問50」

動物の値段 (角川文庫)動物の値段 (角川文庫)

鼻行類―新しく発見された哺乳類の構造と生活 (平凡社ライブラリー) 百姓貴族 (WINGS COMICS) いのちの食べかた [DVD] 霧笛荘夜話 (角川文庫)

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2009年12月01日

あきれるほどデカイ

■「もっと!ほんとのおおきさ動物園」

もっと!ほんとのおおきさ動物園もっと!ほんとのおおきさ動物園
柏原 晃夫

学習研究社 2009-03
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★★★★★

 うわあ、やりやがったな。
 というのが素直な感想ですね。ふつう思ってもやらないよ。タイトルの通り、動物の実寸大の写真を載せてんの。本のサイズはB4、つまり見開くとB3です。
 ウォンバットとかコウモリ、テナガザルとかはいいよ、全身おさまるもの。オオカミとかチーターも、まあ、顔は入る。しかしライオンになるともうアウトだろ。表紙がまさにライオンだが、切れまくってるじゃん。と、思ったら、中の写真は折り込み形式。広げると約B2サイズで見事に収納されてました。
 さて、目次にはバイソンという名前もある。どうすんだこれは。って、もう納める気なし! 見開き(B3)にしても、顔の1/2だけしか入っていない。なんて強気の姿勢なんだよ。と思った私はまだまだ甘かった。上には上がいる。誰だ。
 それは地上最強の動物とも称される、そう、カバだー。
 入ってねえ!! 顔がまったく入りきれてないッスよー。当然見開き、しかも観音開き形式で、つまりB4が横に4枚並んでいるんだけど無理w というか顔の半分以上が欄外です。
 とはいえ、そんな写真でもカバとわかる。カバは水に入ったまま生活しやすいよう、顔面の上部に鼻、目、耳が一直線に並んでいるんだけど、そこを撮影している。カバの生態と特徴を伝えるのに最も適した箇所を掲載した。素晴らしい。

 もうね、とにかくインパクトだけで満腹だよ。でもいろんな動物がいて毎日食える。飽きない。それどころか噛めば噛むほど味が出る。もはや私にとってこの絵本は米だな。

 でもこの米が旨いのには、実はもっと秘密がある。

 まず「フォント(文字)」がいいね。表紙のフォントはもちろんだが、中身のフォントは、表紙のものと基本的に同じでありながら、もっと色味やデザインに味がある。
 次に「動物の特徴」だ。それぞれの動物の写真の横には、それぞれの特徴が、短い言葉とかわいいイラストで記されている。だから写真と特徴を照らし合わせることができる。

 そして、これは本当に大事なことだと私は思うんだけど、「個体名」が載っている。これが素晴らしい。個体名、つまり写真に写された彼、彼女の識別名ね。アライグマのゼフくんとか、ハイエナのシマコちゃんとか、そゆこと。
 なぜ個体名があることが素晴らしいのかって、そりゃ簡単だ。動物を見るとき、「わあ、ゾウガメがいるー。」ってのより、「わあ、太郎くんがいるー。」ってのほうが親しみがわくでしょう。
 ゾウカメという「モノ」ではなく、太郎という「彼」という認識がとっても大切なのだ。
 太郎のことを太郎と思えば、他のゾウガメはもう太郎ではない。太郎と他のゾウガメを区別するため、一生懸命観察する。するとすべてのゾウガメが実はすべて違う生き物なんだという当たり前に気づく。動物園の動物を「個体名」で呼ぶことで、動物を種というカタマリではなく一個の命として捉えることができるようになる。
 やがて、虫だって植物だって、もちろん私たち人間だって、ぜんぶ違ってぜんぶ命であることに気づいちゃう。

 ぜんぶ違うのだから、「またかよ」だとか「前と同じだろ」だとかいう退屈とはもうオサラバだ。飽きることなんて世の中にはないってこと、知ってました? 世界はおもしろだらけです。
 
 
 うーん、挿絵が本当にいい。誰だ。柏原晃夫(かっしー)だ。誰だw でも気に入った。とりあえず前作「ほんとのおおきさ動物園」も手に入れなきゃなー。


ほんとのおおきさ動物園ほんとのおおきさ動物園

実物大 恐竜図鑑 これがほんとの大きさ! (児童図書館・絵本の部屋) 原寸大どうぶつ館 (小学館の図鑑NEO 本物の大きさ絵本) 原寸どうぶつ図鑑―もしあの動物が隣にいたら

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2009年11月20日

しみじみと「ひと」が好きになる辞典

■「あべ弘士 どうぶつ友情辞典」

あべ弘士 どうぶつ友情辞典あべ弘士 どうぶつ友情辞典

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★★★★☆

 元旭山動物園の飼育係で絵本作家のあべ弘士のエッセイだ。

 「獅子」「豹」「虎」からはじまって、「梟}(ふくろう)」「蜻蛉(とんぼ)」「鯰(なまず)」に「土竜(もぐら)」と、陸に海にほ乳類から昆虫まで全36種の動物との絡みについての交友録なんですね。
 それぞれの動物の章が、1行から1ページ足らずの短い複数の節で構成されている。しかもその節の分け方が実に節操がない。
 「獅子」ひとつにしても、「百獣の王」とあたりまえのところから、「獅子身中の虫」「獅子の子落とし」といった諺や慣用句にまつわる話、そして「ライオン石鹸」や「銀座ライオン」など、もはやライオンとかどうでもいい内容にまで広がっている。なんとまあ、い(良)い加減な。
 そういうわけだから、彼自身の牧歌的風貌と、そのあたたかな絵柄を期待して読んだなら、概ね期待通りのお気楽話ばっかりだ。ほっこりするよ。ちなみにイラストのページ(カラー)もちゃんとあるのが嬉しい。

 さあ、しかし、さすが元飼育係だ。野生の命と真っ向から渡り合ってきた男の話だもの。これ大丈夫か?という危うい話もチラホラあるんだ。これがおもしろい。

 たとえば、水鳥舎にカラスが餌を奪いに来るのを防ぐために、以前水鳥舎の壁に激突して死んだカラスを冷凍保存しておき、餌を盗りに来たカラスの目の前で再び壁に激突させる。当然落ちて動かなくなる冷凍カラスを見て、ここは危険だと仲間カラスに思わせた話なんてのがある。
 他にも、陸ガメが死んだとき、原因究明のために冷凍保存していたら、ちょうど(旭川)市の監査が入った。カメは書類上はまだ生きている(在庫としてある)はずになっているので、冷凍カメを置いてごまかした。監査委員は素人だ、わかるまい。なんて話もある。

 「エコ」やら「動物のすみかを守ろう」やら「かけがえのない命、大切に」やらの、聞こえのいいフレーズに慣れた私らには、なかなかに衝撃的な内容だ。


 でも考えてみたら、誰に迷惑をかけた話でもないし、命に対しても不誠実では決してないよね。もし私が、命の尊厳がどうのとか思うなら、自分が毎日死体をウマイだのマズイだの評価して食してることのがよっぽどヒドイ話だと思う。


 おっと、基本的にはショッキング(笑)な内容はそんなにはごくわずか。むしろ、動物の楽しい話ばかり、安心。特に私はこんな話が好きだなあ。

 『このツイーーッという翔び方は、カワセミにしか似合わない。同じ水面を翔ぶトリでも、カワガラスならヒョイーン ヒョン ヒョンだし、アオサギならバファラン バファランだし、コチドリならチョィンツ チョィンツだし、カルガモならパタパタパタパタ、子連れならパタトトパタトトトトパトトトだし、そんな翔び方で、誰もツィーーッとはならない。』
 『日本語、特に漢字表記する動物名には、うーむと感心させられるものが多々あって、わたし、とても興味があるのです。[中略] 鳥もたくさんあって、郭公(かっこう)、雲雀(ひばり)、百舌(もず)、水鶏(くいな)、大瑠璃(おおるり)、雪加(せっか)。啄木鳥(きつつき)なんて字面見ただけでそれとわかる。丹頂(たんちょう)はそのまんま。信天翁がアホウドリとはなんでそうなったの?[中略] 虫もいい。髪切(かみきり)、邯鄲(かんたん)、天道(てんとう)、蜉蝣(かげろう)、いい名だ。落文(おとしぶみ)、さすが日本。[中略] 土竜、あなたなぞ、天下一品です。』

 いいよね? こんなシビレル話が目白(めじろ)押し。
 どこがいいのかって、そりゃアナタ、動物見るだけでこんなに違いを見つけて妄想する生き方ができてごらんよ。毎日道中ザッツエンターテイメント、四六時中バラ色ですよ?


関連記事→「どうぶつえんガイド」「あべ弘士ART BOX 動物たち」


どうぶつ句会どうぶつ句会

どうぶつ句会オノマトペ どうぶつえんガイド―よんでたのしい!いってたのしい! (福音館のかがくのほん) どうぶつはいくあそび どうぶつニュースの時間 (おはなしパレード)

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2009年09月27日

閉園した動物園の話

■「到津の森の詩―市民の森・到津遊園が育んだ児童文化と環境教育」

到津の森の詩―市民の森・到津遊園が育んだ児童文化と環境教育到津の森の詩―市民の森・到津遊園が育んだ児童文化と環境教育

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★★★★☆

 福岡県北九州市に到津(いとうづ)の森公園という動物園がある。
 到津の森、私としては世界一の動物園だ。一般的に言っても、現園長の岩野俊郎氏と旭山動物園の名誉園長・小菅(こすげ)正夫氏が数十年も親友であるという点、つまりお互いが認め合った者同士という点からも、到津の森のレベルの高さがうかがい知れる。

 到津の森はかつて到津遊園と呼ばれていた。
 1998年4月20日、西鉄「到津遊園」の廃園が発表された。
 西鉄とは西日本鉄道株式会社のこと、うまりバスやら電車やらを運営している企業だ。この西鉄の前身会社が沿線住民への社会貢献を目的に、1932年(昭和7年)に開設した遊園地(のちに動物園が併設)が到津遊園であった。
 到津遊園は、戦争をくぐりぬけた歴史を持ち、動物園のサマースクールとしては日本一古い「到津遊園林間学校」では、のべ5万人の子どもたちが学んだ。北九州市の真ん中に位置し、都心からも近く、にもかかわらず全国有数の照葉樹林を備えたこの市民のオアシスはしかし、近隣のレジャー施設の増加や施設の劣化、動物園人気の低下等々の理由から赤字を累積した挙げ句、西鉄そのものの財政まで圧迫し、2000年(平成12年)5月31日、閉園した。

 ところがだ、「到津遊園」は復活したのだ。2002年(平成14年)4月に、その名を「到津の森公園」と変えて市民の前に帰ってきた。
 到津遊園は大改装を行い、その歴史を内包したまま、まったく新しい市民の憩いの場となった。

 この復活劇を、その立役者である北九州インタープリテーション研究会が綴ったのが当書だ。
 こうした記録の場合、存続運動の推移や成果を滔々(とうとう)と語るものかと思いきや、書面のほとんどを到津遊園そのものの記録や成果に費やしている点が好感が持てる。
 そうか、だからこそ、あのコンクリート剥(む)き出しの檻の、旧態然とした動物園であった到津遊園なのに、その閉園が決まった途端、マスコミが動き、市民が立ち上がったのか。北九州市が施設を買い上げて存続を決定することができたのか。ああ、なんと住民に愛されていた動物園だったのか。そういうことがわかる。 

 異論反論あるだろうが、私は子どもたちのために動物園は必要だと断言する。絶対必要とは言わないが、少なくとも「今の日本」には、あったほうがいい。金の流れとか仕事のこととかを教えるより前にすることがあるだろう。
 いのちを感じ、考えること。いのちってなんだろう。私は誰だろう、私が存在しているってどういうことだろう。そもそも私が私と思っている「これ」はなんだ。
 我らヒトが生きるにあたりいちばん大事なこと。名誉とか金とか快楽とか、老化への忌避や死への恐れとか、そんな些細なことをすべて超越する大事なことについて、考える手がかりが動物園にはあふれている。なんか話がずれてきたか。

 しかしあれだな。好きな対象の過去(過去)を調べてひとりで納得して悦に入る。もう恋だな。てゆかストーカーか。盲目。
 

関連記事→「戦え動物園」

到津の森公園 公式サイト
http://www.kpfmmf.jp/zoo/


戦う動物園―旭山動物園と到津の森公園の物語 (中公新書)戦う動物園―旭山動物園と到津の森公園の物語 (中公新書)
島 泰三

「旭山動物園」革命―夢を実現した復活プロジェクト (角川oneテーマ21) 動物園にできること (文春文庫) 旭山動物園園長が語る命のメッセージ 旭山動物園の奇跡 旭山動物園のつくり方 (文春文庫PLUS)

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↓市民参加、署名お願いしまーす
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2009年09月20日

動物園巡りはキリがない

■いのちの王国
いのちの王国いのちの王国

毎日新聞社 2007-12-21
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★★★☆☆

 直木賞作家・乃南(のなみ)アサが、毎日新聞の日曜版に連載していたという動物園と水族館の周遊記をご紹介。

 乃南アサは私が好きな小説家の一人だ。いや、私は小説はあまり読まないので、名前を覚えている数少ない小説作家の一人と言ったほうがいいか。
 昔、実家の食卓に無造作に置かれていた「6月19日の花嫁」と「凍える牙」を読んだらおもしろくっておもしろくって、。フィクションものばかり読んでた私がしばらくフィクションばかり読むことになりましたとさ。

 さて本題はエッセーだった。「いのちの王国」。大の動物好きの作家(らしい)・乃南アサが東西南北18の動物園・水族館を巡り、まとめたエッセーだ。動物写真も満載で気楽に読める。特に大阪市天王寺動物園のカバの写真はすごい。カバ2頭が水中を歩くシーンなのだが、カバが地面から浮いてんの、軽そうなの。天王寺、行きてー。

 内容は、動物をそれぞれ「かけがえのないいのち」と捉え、ちょっとした感動のエピソードとともに語るというスタンスで、非常に一般向けで読みやすい。
 母親キリンが骨折した我が子に食事も取らず寄り添い衰弱死した。しかしその子はその後義足をつけ3ヶ月間生き抜いた。尾びれを損傷し失ったイルカが、人工尾びれをつけ、イルカショーができるまでに回復した。
 いずれもテレビで報道されたことがある話だったと思うが、こういった心あたたまるエピソードが散りばめられ、動物の生を通して人間の在り方を問うている。もちろん説教臭い言い回しではなく、さすが作家、物語を読むかのようにすんなりと受け入れられる語り口で心地よい。

 心地よいが、私には少し期待はずれだったというのが、実は読み始めたときの正直な感想である。
 動物を語るにお涙頂戴はいらない。擬人化する必要はない。
 動物の営みを人間の尺度・感情に当てはめて語るのは私は苦手だ。この本の場合はもともとが新聞連載で、つまり人が生活の中で、食事を取り、テレビでも見ながら、本気で活字に臨む姿勢でないときに読むものだから、ある程度読みやすい形式、つまり物語化が有益であることはわかる。そういう視点で見ると、物語を紡ぎながらも充分に感情を排して理性的だ。理性的だが難解でない。さすがとしか言いようがない文体で、硬軟見事なバランスだ。あれ、誉めてら。

 ともかく、ちょっと批判的な目で読んでいたが、海響館(山口県下関市の水族館)のエッセイで目から鱗が落ちた。
 そこは私の地元近くにある幾度か足を運んだことのある水族館で、展示の目玉に「関門海峡潮流水槽」という展示がある。窓の向こうに実際の関門海峡が見える水槽で、その中には波が起き、潮が渦を巻く。この展示には、眼前だけでなく頭上にも水槽が広がる場所(トンネル)があるが、そこにイワシの群れがきらめくのだ。壮観である。イワシなのに。でもここまでは私も知っている。問題はそのあとの記述だ。

 「しばらくの間眺めていたら、水槽の下の方にいたエイが、(中略)イワシを見事な素早さで捕らえるなり、自分の身体でトンネルの天井に押しつけた。(中略)やがてエイは少しずつ身体を移動させて、そのイワシを口元に持っていくと、頭から食べた。」

 うわああああ! 食ったんかー!? 私ってば何も見てなかった・・・! 乃南さん申し訳ありません。私は海響館の、魚の、動物の何を知った気になっていたんだろう。乃南さんのほうがよっぽどしっかりと動物を見つめていた。動物はどんな環境にあろうが独立したいのちだ。そしてそのいのちは常に自然の歯車にガッチリはまっている。いのちは巡る。
 このエピソード一つで、この本は私の宝物となりました。
 

 ちなみに、乃南さんが巡った18の園は次の通り。
 秋田市大森山動物園;富士サファリパーク;沖縄美ら海水族館;よこはま動物園ズーラシア;旭川市旭山動物園;多摩動物公園;鴨川シーワールド;千葉市動物公園;大阪市天王寺動物園;海遊館;到津の森公園;しものせき水族館 海響館;アドベンチャーワールド;神戸市立王子動物園;宮崎市フェニックス自然動物園;名古屋市東山動植物園;新江ノ島水族館;東京都恩賜上野動物園

 そうです、「到津の森公園」の名があったから買いましたー。飽きねえな私も。


6月19日の花嫁 (新潮文庫)6月19日の花嫁 (新潮文庫)

凍える牙 (新潮文庫) 結婚詐欺師〈上〉 (新潮文庫) 結婚詐欺師〈下〉 (新潮文庫) 冷たい誘惑 (文春文庫) 涙 上巻   新潮文庫 の 9-15

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↓いいから巡ろう、めぐってネw
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2009年08月16日

帰ってきたか? パンダP

■アンタッチャブル柴田英嗣の日本一やかましい動物図鑑

アンタッチャブル柴田英嗣の日本一やかましい動物図鑑アンタッチャブル柴田英嗣の日本一やかましい動物図鑑

講談社 2009-07-15
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★★★☆☆

アンタッチャブル柴田英嗣が、自身のブログで掲載している動物ネタを加筆修正してまとめたもので、つまりはお笑い芸人による動物うんちく本である。なんだその取り合わせは。

アンタッチャブル柴田と言えば、もはや動物番組には欠かせない。むしろ柴田が出ていない動物番組など見るに値しない。
動物番組というものの多くは、ペットの愛嬌や動物園の動物の客寄せ芸を見せて、「やーんかわいー」だの「頭いい!」だの動物を人間の基準で上から目線で評価するだけだ。少し真面目に野生を捉えてる風でも、「残酷だけど、生きるためにはしょうがないってわかってるけど、でもかわいそう」と言ったり。全然わかっていない。
幼児の感覚としてはそれでかまわないのであろうが、テレビに出てるのはみんないい歳の大人だろ。番組での役割分担はあってしかるべきだが、全員が同じ役割なのはどういう了見だ。

そこで柴田英嗣である。
動物ってすげえ、動物ってかっこいいんだよ、知ってる? 本当にわかってんのか!? というスタンス。いわばスポークスマンだ。いや広報部長か。
その知ってる?のレベルが唐突でマニアック。マジで? まさか。嘘のような本当の話。私たち素人でも「動物ってあなどれない」と絶句するわかりやすい驚異。

たとえば本文からの抜粋。(正確には下記はブログ記事からの転載。)

--------------------------------

あとサイは、目がめちゃくちゃ悪い。
だから、敵がいたらとりあえず突進して、
ぶつかってから、なんだったか考える。だって

バカか!!

発想がバカだよ。
痛い可能性あるよ。
実際、列車に突っ込んで死んでしまった、
なんて話あるしね・・・つーか

列車は判れよ!!

お前それはダメだぞ。
列車に勝てるかどうかぐらい、判んねーかな?
「あれは、硬かったっすねー」
じゃねーぞ!本当!

因みに、目が悪いから、鼻がよく利き、
耳がラッパの様な形に進化した。だって

目ーなおせ!!

進化する力で治せたんじゃねーのかよ!
どこかで補わないで治せよ。
そこらへんずれてんだよなぁー。

不便だね、とか思ってたら、
夜行性なんです。だって

見えんのかよ!!

お前が、見えねーつーから気にしてりゃ
なんだそりゃ!

「いや耳が良いんで。」だって

やかましいわ!!

--------------------------------

動物の「ボケ」に柴田が「ツッコミ」するという設定なんですね。
柴田にすれば、動物のおもしろ生態は、つまりそれボケてんだろう? ボケてんならつっこまないと!! ということらしい。
もちろん、どんなにバカバカしい内容でも、それは現在の学説に基づく信頼性の高いものだ。

彼の動物観、動物園観は、実は根本は旧来の「上から目線」の延長上ではあるが、動物が好きで近づきすぎて、結果としてほぼ動物と同じ高さになってしまっている。ミイラ取りがミイラになるってこういうことを言うんだろうな。違うけど。

素直におもしろい本であった。
お笑い本としてはよくわからんが、動物本としてはおもしろい。正直物足りない部分はある。学術的なデーター面の不足とか。でもそんなのは一般的な図鑑見ればいいし、なにより動物園に行けばいい。そもそもお笑いありきの本だ。多分。
とはいえ、動物をこんなにナナメから見て、その魅力を抽出した本って今まで読んだことがない。しかもその魅力ってのが、他の本では、あまり書いていないことばかりである。
動物好きにはおもしろい本ってのは数あれど、誰が見てもわかりやすくおもしろい動物本ってのは珍しい。

表紙デザインはいただけないけどな。


関連記事→「おつかれパンダちゃ〜ん(・(⊥)・)/」

アンタッチャブル柴田英嗣の平穏な僕(blog)
http://ameblo.jp/yakamashii/
TBS RADIO 954 kHz「JUNK アンタッチャブルのシカゴマンゴ」(愛聴してます)
http://www.tbs.co.jp/radio/format/sikaman.html

動物検定[一般常識]公式ガイドブック (アニマルプラネット動物検定シリーズ)動物検定[一般常識]公式ガイドブック (アニマルプラネット動物検定シリーズ)
今泉忠明

犬検定公式ガイドブック (アニマルプラネット動物検定シリーズ) 恐竜検定公式ガイドブック (アニマルプラネット動物検定シリーズ) 昆虫検定公式ガイドブック (アニマルプラネット動物検定シリーズ)

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↓押しても動物の鳴き声は聞こえませんが、どうぞ押してみて
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2009年05月02日

しっぽをたてろ!

■冒険者たち―ガンバと15ひきの仲間

冒険者たち―ガンバと15ひきの仲間 (岩波少年文庫 (044))冒険者たち―ガンバと15ひきの仲間 (岩波少年文庫 (044))
薮内 正幸

グリックの冒険 (岩波少年文庫) ガンバとカワウソの冒険 (岩波少年文庫)

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★★★★★(満点)

しっぽをたてろ!

この言葉を聞いて、心がぐわわっと沸き立つ諸兄も多いと思う。沸き立つものは、きっと誇りとか勇気とかいう言葉で表される感情だ。
この感情はどこから来るかというと、もうすでに言った。心だ。心というと感情で揺れ動くイメージがあるから、

ゆるぎないものとして魂と言い換えてもいい。
だからこうも言う。しっぽにかけて!
いずれにしても、そういった根源的で無限な自分それ自身が、沸き立つ。

しっぽをたてろ!

アニメ「ガンバの冒険」を象徴する名言である。
「ガンバの冒険」とは、ある島を暴力と恐怖で支配する白イタチのノロイを倒すべく立ち上がった7匹の勇気あるネズミたちの物語である。
1975年に放映されたこのアニメーションは、さまざまな面で衝撃であった。

子どもに与えた衝撃は、そのストーリーだ。ノロイの圧倒的な恐怖とそれに立ち向かう勇気の物語は、かつての子どもたち(私だ)の心を今でもとらえて離さない。
大人に与えた衝撃は、チーフディレクラー・出崎統の驚異的な演出である。「ハーモニー」と呼ばれる止め絵の効果や、少ないセル枚数での見事な動画表現など、その驚異は枚挙にいとまがない。出崎氏とは「あしたのジョー」や「宝島」など、多くの日本を代表するアニメに関わった方ですよ、念のため。

つまり、同アニメはアニメ史に燦然とその名を残すものであるが、そうだ今回は小説の話であった。アニメ版につ
いては専門家の素晴らしい批評が多くあるので、興味のある方はそちらを参照されたし。

--------------------------------

このアニメ「ガンバの冒険」の原作が、斉藤惇夫の小説「冒険者たち―ガンバと15ひきの仲間」だ。

内容は当然ほぼ同じだが、もちろん違う点も多い。例をひとつだけ。
敵役ノロイの恐怖の質が違う。
アニメでは圧倒的な残虐性をもつ暴君である。その姿の相似からも喩えられることが多いが、マンガ「うしおととら」の「白面の者」のような恐ろしさだ。わかりやすい腕力の恐怖だ。
対して小説では静かな忍びよる恐ろしさを描く。何を考えているかわからない恐怖。個人的にはマンガ「ドラゴンボール」で、フリーザが最終形態になった直後と同等の不気味さがあった。ある意味理性的な感じ。

どちらがいいという話ではない。どちらもいい。作品を通して伝えたい根本は一緒だと思うから。しっぽの気持ち。


ところでこの「冒険者たち」はスピンオフ作品だとか。
「グリックの冒険」「冒険者たち」「ガンバとカワウソの冒険」の三部作でひとまとめ。まず「グリック」ありき。そうだったのか。

「グリック」はリスのグリックの話。
飼いリスのグリックが、北の森で暮らす野生のリスの話を聞き、自分の「本当の」ふるさとである北の森を目指す。その旅の途中でグリックが出会い、少しだけ行動を共にし、彼を導いたネズミがいた。それがガンバだ。

「カワウソ」は「冒険者たち」の直接の続編である。
ガンバとその仲間たちが、行方不明のネズミを探す旅の途中で出会った、絶滅したはずのカワウソとともに、伝説の川「豊かな流れ」を目指す冒険譚だ。

時系列的には「冒険者」「グリック」「カワウソ」となる。

今回、「グリック」から読み始めたが、正直そこまで期待していなかった。なのに、なんだこのおもしろさは。
甘っちょろいグリックの成長の過程はもちろん、脇を固めるヒロイン・リスのんのんや、鳩のヒッポーも魅力的でしょうがない。「グリック」から「冒険者たち」へ、読み終えるまで2日と要さないほどハマった。

ところが、「カワウソ」は読み終わるのにちょっと時間がかかった。
たぶん、すでにノロイという最高の宿敵を倒したガンバたちを、私が「挑戦者」として認識できなくて、少しテンションが下がったことが原因だろう。防衛より挑戦のがわかりやすく高揚できる。
とはいえ明らかにおもしろいのは確か。いまや動物園でカワウソ見ると異様にテンションが上がるようになったし。


動物の擬人化のルールや章立てに、対象読者(子ども)に配慮した工夫があり勉強になる。
児童文学であるから言葉遣いは平易だ。むしろ幼稚だと嫌悪感を覚える人もいるだろう。そう思う人は読まなければいいだけだ。
なにはともあれ名作である。

さっきノロイを喩えてマンガ「うしおととら」の「白面の者」と言った。もし「うしおととら」が好きなら、私はこれ、読むとメチャクチャおもしろいと思う。

「オレは… まっすぐ…立ってるか…? 」
「おまえたちの旅は無駄ではなかった」
「今、オレ達は・・・太陽と一緒に戦っている!」
「もう完璧だ。白面、来い!」」

特に「冒険者」は、読みながらそういう光景が怒濤のように押し寄せてきたのだ。
そのとき、私のしっぽも、確かに、たった!

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原作者である斉藤惇夫(あつお)は、長年子どもの本の編集者として活躍してきた人だ。
彼が著作「現在(いま)、子どもたちが求めているもの―子どもの成長と物語」で言っていたことがある。記憶だから子細の差異はご容赦願いたいが、こう言った。

「なぜ絵本の読み聞かせが必要か。それは子どもにとって大人は水先案内人だからだ」
つまり、子どもは信頼できる大人(親)とだからこそ、未知の世界に旅立つことができるというのだ。
単純なほんわかあたたかなイメージしかなかった絵本の読み聞かせというヤツのイメージがぶっ壊れた。

こうも言った。「子ども相手だからこそ手を抜けない」
子どもこそ本質のすぐそばにいる。「裸の王様」の子どものように、彼らはいつでもまっすぐ最短距離をやってくる。だからごまかすことは容易でない。当たり前だ。

そんな認識をもつ原作者の児童文学ですよ。
偉そうなこと言ってるが実際どうよ。それを確かめるくらいの動機でもいい。私は一読の価値があると思う。いや一読ではもったいないけどな。


余談ですが。
子どもが読むならハードカバーの大型判がもちろんオススメですが、大人の方なら文庫版がオススメ。
文庫版には原作者自身のあとがきがあって、作品のできる経緯が少し描かれている。これがおもしろい。
文学に言い訳じみた解説は不要!という確固たる信念をもつ方以外は、ぜひどうぞ。


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「宝島」

ガンバの冒険 DVDBOXガンバの冒険 DVDBOX
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宝島DVD-BOX ガンバの冒険サントラ 未来少年コナン 30周年メモリアルボックス (期間限定生産) [DVD]

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2009年04月23日

野生動物とはなにか

■北の動物園できいた12のお話 旭山動物園物語

旭山動物園12の物語 (角川ソフィア文庫)旭山動物園12の物語 (角川ソフィア文庫)
浜 なつ子

角川学芸出版 2008-07-25
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★★★★★(満点)

便乗商法じゃない。すでに旭山動物園が有名になった2005年11月発行である。しかしなんとまあ、地に足の着いた内容であることか。

旭山動物園では2004年までに「ととりの村」「もうじゅう館」「ペンギン館」「 オランウータンの空中運動場」「ほっきょくぐま館」「あざらし館」がすでに完成していた。とくに、2004年は「あざらし館」がメディアで取り上げられ、初めて月間入園者数が上野動物園を抜き日本一になった年である。
翌2005年には「おらんうーたん館」と「くもざる・かぴばら館」が完成した。

そういう時期に出版された本である。いわゆる旭山動物園フィーバーまっただなかだ。たくさんの旭山動物園関係の出版物が世に出た。そのいくつかを私は読んだ。念のために言うが、私が読んだものの多くは良質のものであった。
それを踏まえてあえていう。この本は特にいい。

小菅(こすげ)名誉園長や坂東園長、ついでに絵本作家で元旭山動物園飼育係だったあべ弘士さんなど、旭山動物園に関わる人間たちの思いがこれほどストレートに書かれている本は、関係者本人たちが著したものを除いては、読んだことがない。

野生動物はペットじゃない。野生動物は野生動物として潔く生きている。動物園の動物たちは“かわいそう”ではない。カラスだって大切な生き物、パンダやコアラのようにすばらしいしおもしろい。生きている動物を擬人化するのはやめよう。ほ乳類だけでも約4,000種、つまり4,000通りの生き方がある。野生動物と人間はどうやって共生したらいいのだろうか。野生動物とはなにか、ヒトとはなにか、生態系とはなにか。動物園でいちばん大事な役割は、来た人に、にこにこ笑ってもらうこと。

旭山動物園がいつも声を大にしていっていることが、そのままの形で記されていると思う。
何度も読んで、そして動物園に通って、じっくりと味わいたい本だ。


ちなみに。
「北の動物園できいた12のお話 旭山動物園物語」というのはハードカバー版タイトルで、「旭山動物園12の物語」は文庫版タイトル。なぜか名前が違う。
ハードカバーのほうは「旭山動物園」という文字がかなり小さい。園名が前面に出ている文庫版のほうが後発だから、やはり商業的な理由からだろうか。

私がもっているのはハードカバー版だが、最近購入したためか、映画「旭山動物園物語−ペンギンが空を飛ぶ」(主演:西田敏行)の帯がついてた。なんという役者不足の帯だ。
この本を読んで、あの映画の描写が、いかに見る者に野生動物に対する誤解を与えるものだったか、改めて痛感した。映画のすべてのエピソードは、確かに現実に則している。しかし描き方がマズイ。動物が人間のような感情をもっているように終始徹底しているのがな、残念。


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「旭山動物園物語−ペンギンが空を飛ぶ」


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2009年04月18日

よんでたのしい! いってたのしい!

■どうぶつえんガイド

どうぶつえんガイド―よんでたのしい!いってたのしい! どうぶつえんガイド―よんでたのしい!いってたのしい!
あべ 弘士

福音館書店 1995-04
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★★★★★(満点)

元旭山動物園の飼育員で絵本作家・あべ弘士さんによる、動物園を楽しむためのガイド絵本である。なんという適材適所。
この本にはライオンやゾウ、シマウマなど40種とおまけ1種で、合計41種(ヒトだ)の動物について書かれている。動物園で見ることができる主な動物は、ここに網羅されているといっていい。

もうね、すごいよ。
この人にしか書けないし、描けない。動物園で25年間ずうっと動物を見つめてきた人だからこその絵本だ。

「キリンのオシッコは風に散って金色に輝いて、たまに虹が架かる」だの、「カンガルーはときどき赤ちゃんを袋から落っことす」だの、「カバは水の中でごろんごろんができる」だの、「片足立ちのフラミンゴは疲れたら足をかえる」だの、生で動物と対峙してきたからこその視点が満載なのだ。
動物の数値情報とか、いわゆる生態ウンチクではなく、キリンであるカレとか、カンガルーであるカノジョとかの個人の魅力を書き留めた感じ。ザ・人間交差点みたいな。だからおもしろい。動物だけど。

そして、絵がまた素晴らしい。
あべさんの絵は「あべ弘士ART BOX 動物たち」で思い知らされたが再確認。すごいよ・・・。
その描線が、画材が、デフォルメ具合が、まさにその動物という描き方なのだ。つまりカメはカメ、トラはトラ、ダチョウはダチョウと、動物により手法をすべて変えているのだ。だからその動物らしさがあふれている。

ある研究によれば、動物園で人が動物を見る時間は、平均「2.6秒」という。それもほとんどは素通りで、いわば「0秒」といっていいそうだ。たまに30分くらいじーっと動物を見ている人がいて、それで平均すると「2.6秒」になるという。

この絵本を読んだら、それがどんなにもったいないことかわかるかもしれない。
しかもだ、生き物のおもしろさってこんなもんじゃない。ここに描かれてるのはまだまだスタートライン。

さて行くか、動物園へ。山へ、川へ、自分ちの庭へ! 世界は生き物のおもしろであふれてんだ。ふしぎ、発見。


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「あべ弘士ART BOX 動物たち」

エゾオオカミ物語 (講談社の創作絵本)
エゾオオカミ物語 (講談社の創作絵本)あべ 弘士

講談社 2008-11-26
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旭山動物園物語  オオカミの森 とうさんのあしのうえで (講談社の創作絵本) てんごくの おとうちゃん (講談社の創作絵本) 旭山動物園物語  ペンギンが空をとぶ (角川文庫) 親が子供に伝えたい「環境」の授業  ――命はつながっている



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2009年03月21日

アニマル版・記憶スケッチアカデミー

「どうぶついっぱいかいちゃおう」
「もっとどうぶついっぱいかいちゃおう」

どうぶついっぱいかいちゃおう (にいるぶっくす)どうぶついっぱいかいちゃおう (にいるぶっくす)
あべ 弘士

もっとどうぶついっぱいかいちゃおう (にいるぶっくす)

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★★★★★(満点)

あべ弘士の絵本である。絵本か?

お手本無しに、記憶だけで、動物をさあ描こう!言われる。
そして描くための余白がある。
その繰り返しの本だ。
ちなみにあべさんの「答え」はあったりなかったりする。(ヒントはある)
答えがあってもテキトウである。
その「答え」も、写実的に見ればヒドイと言われかねないレベルの絵だ。
だが、それが良い。
絵なんてモノはそれで良い。

あべさんの絵は、正確な観察眼に裏打ちされた、極端なほどの省略画法で描かれている。デフォルメってやつだ。
あべさんの動物絵の確かさは、動物を観察するほどにわかる。
昨年12月にも、あべさんの絵については述べた。
http://gon623.seesaa.net/article/111932017.html
しかし、あのときは気づかなかった驚愕を、今、カンズル。
なんという最低限度の線。これしきの線で、「まさにこの動物」という絵のデキはどういうことか。

なんてことは、今日は実はどうでもよくってさ。

animal

夫婦ふたりで夜中にお絵描き大会した。これが言いたい。

おもしろいのなんの。

絵を描くの、楽しくって楽しくって。
この楽しさをもっとじっくり味わうために、もっとじっくり動物を観察したいというアリジゴク。


↓同情票歓迎
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ラベル:動物

2009年03月07日

本物と比較したいもの

■みんなのかお

みんなのかお
みんなのかお戸田 杏子

福音館書店 1994-11
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こんにちは どうぶつたち (0.1.2.えほん) てん てん てん (0.1.2えほん) どうぶつのおかあさん (福音館の幼児絵本) もう おきるかな? (0.1.2.えほん)

★★★★☆

動物の顔写真が延々と載っている。その数、24種各21個体。

動物の種類を列挙する。
ゴリラ、ラクダ、レッサーパンダ、ゾウ、アザラシ、サイ、カワウソ、ホッキョクグマ、タヌキ、バク、ヤギ、オランウータン、トラ、カンガルー、カバ、ツキノワグマ、チンパンジー、キリン、オオカミ、キツネ、シマウマ、アライグマ、ライオン、ニホンザル。

悪くない。子ども対象の絵本としては、動物の選別は悪くない。正確に言うと、子どもの親、すなわち一般の大人が知っているであろう動物が選別されているという点で、悪くない。

他の同類の本、たとえば「みんなのかお」の作者(戸田&佐藤)の手によりる別の絵本「こんにちは どうぶつたち」の感想を見ると、「動物がマイナーだ」と言う批判が多い。
ついでに言えば、「こんにちは どうぶつたち」では、「動物の顔がアップ過ぎる。正面顔で動物のシルエットがわかりづらい」というマイナス評価も多い。
これは私にとっては、「なぜそれが悪いのか」といぶかしむところではある。子どもが、動物をイメージでなく、しっかりと見つめる仕掛けとして、むしろ英断であるとすら思う。

話を「みんなのかお」にもどす。

それぞれの動物の顔写真は、日本中の動物園の各個体を、動物園の来場者が見る位置から撮影したものだと言う。
撮影対象となった動物のいる動物園の数は81園。まず間違いなく、誰にとっても近所の動物園が含まれているだろう。

この絵本の出版は1994年であるから、無論、撮影された個体そのものは、現在かなり年老いているか、すでに死亡しているものも多いはずだ。他の動物園に移動している個体もいるかもしれない。
しかし、動物園に行けば絵本と同じ目線で、年老いていれば年老いた個体の、死亡したならその子どもの、さまざまな表情を見ることができるだろう。移転しているなら、彼の行く末について考えるのも楽しい。
考えるだけで、今すぐにでも動物園に行って、動物の顔を一生懸命見たくなる。そういう本だ。

難点はある。残念なのは動物の種類分けが大雑把なことだ。
ホッキョクグマやらツキノワグマは、クマの中でも区分されているのに、他の動物はなぜそうしていないのか。
今より動物園がマイナーだった時代に出版されたからかもしれない。
それを踏まえても、せめてゾウやサイくらいは、アフリカとアジアとかシロとクロを分けるとか、それくらいはして欲しかった。

しかし、それしきのことでこの本の価値が下がるわけでは、もちろんない。
動物にもそれぞれ個性があること、つまりそれぞれが一個の独立したいのちであることが、見事に描かれていることに違いはない。
また、動物1種あたりの写真数が多く、撮影角度も多様だから、動物の顔を多面的に見ることができる。
ああ、ラクダって、バクって、こんな顔してたのか。見ているようで全然見ていなかった。

人間の感覚で見たら、とんでもない不細工な顔だ。醜悪ですらある。しかし、この顔である必然性が、彼らの生活にとってはあるのだ。
無駄がなく洗練されたフォルムとわれわれは言う。それを美しいと表現したりもする。そうであるなら、これらの動物の顔とはなんだ。
これを考えるのがメチャクチャおもしろい。人間の価値観なんて、自然の中では一分派に過ぎないんだなあと痛感する。

マたかが絵本で、そんなに意味を求めなくても良いかもしれない。


↓みんなの一票
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ラベル:動物

2009年02月09日

夢はいつか必ず叶う

■旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ (2009/02/05)

旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ スペシャル・エディション [DVD]旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ スペシャル・エディション [DVD]
西田敏行, 中村靖日, 前田愛, 堀内敬子, マキノ雅彦

角川エンタテインメント 2009-07-15
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★★☆☆☆

映画「旭山動物園物語」(2/7公開)の試写会が当たったので、仕事をうっちゃって劇場へ。
ペア150組の枠に2000組の応募があったとか。人気なのは旭山か動物か無料か。いずれにしてもありがたく鑑賞。

お客が来ず閉園間際まで追い込まれながら、飼育員らの努力で奇跡の復活をとげた、いまや誰もが知っている旭川市旭山動物園の物語。マキノ雅彦監督作品。

マキノ雅彦、津川雅彦が監督業を行うときの別名である。
マキノ雅彦監督の作品を、私は見たことないが、予告くらいなら前作「次郎長三国志」を劇場で見たことがある。
大物俳優を多数起用したその映像は、彼の「力」を感じさせるものであった。その他の印象としては、いまいち洗練されない泥臭いコミカルさと義理人情が古き良き昭和を連想させた。

この作品も同じだ。

園長だけしてれば良かったのになあ、雅彦。
テレビドラマ「奇跡の動物園〜旭山動物園物語〜」(主演:山口智宏)は彼が園長役であった。この園長役は雰囲気が素晴らしかった。情熱と理性を兼ね備えたリーダーであった。

映画版の園長役は西田敏行である。
彼が悪いわけではない。しかし旭山の小菅(こすげ)園長とは何かが違う。
そして、影は薄いがおそらくもうひとりの主役、中村靖日演じる獣医で飼育係について。いちおう副園長の板東氏をアレンジしたものだと思うがあえて言う。誰だオマエ。
所詮私の勝手な印象だし、実は映画のほうが知り合いにはイメージ通りなのかもしれない。
が、しかし。
私は板東氏とは少しだけお会いしたことがある。また小菅園長の親友という北九州市到津の森公園の岩野園長が言う小菅氏の話とかも聞いたことがある。それがどうも映画の雰囲気と違う。卑小化されてないか。

いや人間のイメージとかはこの際どうでもいい。そんなのは些細なこと。

旭山の方々がお話しする「伝えたいのはいのち」がどうにも伝わってこない。
これが決定的に駄目だ。

確かに「伝えたいのはいのち」を伝えようとしているふしはある。
でもせっかくの素晴らしい動物たちの映像も、CG処理で台無しにするていたらく。いや映像は本当にすごいものを撮ってるんだ。なのに。
物語も旭山の衰退と復興のインパクトがある事実をなぞって感動を煽っているに過ぎない。
夢はいつか必ず叶う。ああそうかい。

旭山の歴史の中で起こった数々のエピソードをストーリーに織り込んでいるが、これも時系列を無視するなどムチャクチャだ。
映画であるから脚色は良いと思う。ノンフィクションを謳ってたとしても、作品が素晴らしくなるなら事実と違っても問題ないと私は思う。
素晴らしくなるなら。

たとえば飼育係がゾウに踏まれる描写があったが、あれは物語に不可避の演出ではなかった。
あまりに唐突だったので、私が知らないだけで、その時期そんな事故があったのかと思った。事実なら唐突でもしょうがない。
それで帰って調べたらそんな事実ひとっつもない。(劇中の時代より数十年前に同様の事故はあった。)


それよりも、映画では完全にすっ飛ばされた「こども牧場」とか最初の行動展示「ととりの村」、その後の行動展示の方法の試行錯誤、小菅園長が目指した地元の動植物展示なんかが、旭山動物園の真価だと私は思う。
このあたりを描かなくて野生動物と家畜動物の違い、動物の能力の驚異と素晴らしさ、人間の価値など、旭山がそこかしこで訴える「いのち」が伝わるものか。
映画の原案という『「旭山動物園」革命―夢を実現した復活プロジェクト』(小菅正夫・著)には、このへんくどいほどしっかりと書かれているんだが。

でも会場は、終始笑いと涙に包まれていたので、たぶん私が間違ってるんだろうよ。


追伸。
旭山動物園の小菅園長は平成20年度3月で定年退職、旭山を去るはずだったが「名誉園長」として残留することが決まったらしい。
夢は終わりませんな。 小菅氏の夢は必ず叶う。これは確信。


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「戦え動物園」(旭山動物園、到津の森公園に関する書籍感想)「奇跡の動物園〜旭山動物園物語〜」(テレビドラマ版)「旭山動物園のすべて〜動物たちの鼓動が聞こえる」(ドキュメンタリー)

映画「旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ」公式サイト
http://www.asahiyama-movie.jp/
旭川市旭山動物園 公式サイト
http://www5.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/

「旭山動物園」革命―夢を実現した復活プロジェクト (角川oneテーマ21)
「旭山動物園」革命―夢を実現した復活プロジェクト (角川oneテーマ21)小菅 正夫

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生きる意味って何だろう?  旭山動物園園長が語る命のメッセージ (角川文庫) 親が子供に伝えたい「環境」の授業  ――命はつながっている 夢の動物園  旭山動物園の明日  [DVD] 奇跡の動物園 ~旭山動物園物語~ [DVD]



映画タイトル一覧・2
映画タイトル一覧・1(別窓:別サイト)


↓旭山を見習って一歩ずつ
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2008年12月30日

どうぶつを描くひとたち

はじめてずかん どうぶつ〈1〉 (はじめてずかん)
はじめてずかん どうぶつ〈1〉 (はじめてずかん)はた こうしろう

コクヨS&T 2008-06
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どうぶつ〈2〉 (はじめてずかん) どうぶつなんびき? (絵本・いつでもいっしょ) しりとりあいうえお おえかきブック―子どもが描く思い出えほん (WORK×CREATEシリーズ) なつのいちにち

★★★★☆

本屋で一目惚れというやつです。即購買。
人間に一目惚れすることはこれまでないのだが、相手が本だとこの限りではない。
我が欲望をすべて受け入れて拒否することがないからだろう。
人間というものは、ときに拒絶するから、それが恐いからストッパーがかかるのであろう。臆病者め。
ともかく。

一目惚れである。
題名は「ずかん」。しかしその「ず」の絵柄は表紙にあるようにマンガ的なものである。
図鑑にある図といえば、写実的で微細までしっかり描き込まれているのが通常だと思う。
しかしこの「ずかん」は一個の「どうぶつ」に対して数色しか使われていない。
地の色とその影の色×部位数みたいなもんだ。つまり「しろくま」なら、体の白とその影の水色がまずひとつ。あとは顔などの黒部分とその光沢。それで終わり。
すべての動物がこの具合である。

それなのに、いやむしろそれだからこそと言うべきか、リアルな仕上がりである。
個々の動物が持つ特徴が効果的にデフォルメされて、その動物感がみごとに伝わるのだ。

この作者、動物やら植物やら好きなんだろうなあ。
嫌いなら嫌いで、その鋭い観察眼に舌を巻くよ。

作者誰だよ。と調べたら「はたこうしろう」。聞いたことがあるな、誰。


ああ!!


今年春頃に衝動買いした絵本「なつのいちにち」の作者かー!!
たしかこのときも興奮してすごいすごいって周りに言ってたら、「有名な絵本だよ、それ」って冷静に返された恥ずかしい記憶が蘇る金狼。

とりあえず私、この方の絵柄が好きということはわかった。


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あべ弘士ART BOX 動物たち
あべ弘士ART BOX 動物たちあべ 弘士

講談社 2007-03-23
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あべ弘士 どうぶつ友情辞典 エゾオオカミ物語 (講談社の創作絵本) どうぶつえんガイド―よんでたのしい!いってたのしい! (福音館のかがくのほん) どうぶつゆうびん どうぶつ句会オノマトペ

★★★★★

あべ弘士さんの画集をついに購入しました。
私が一度どころか十度も百度も行ってみたい旭山動物園の元飼育員で絵本作家。きむらゆういちが文を書きあべ弘士が絵を描いた「あらしのよるに」シリーズは有名。ってこんな説明いらねえわな。
日本屈指の動物絵描きさんです。

ついに購入したなどと息巻いておきながら、こういうことを言うのはたいへん恥ずかしいが、私はあべ弘士さんの絵がそれほど好きではなかった。
描き込みのあるのものは昭和の絵柄というか、もったりとした印象で好みではなかった。
「あらしのよるに」などの絵柄は乱暴というか、クセがありどうにもなじめなかった。
とは言いながら、今回画集を見て、ほとんどその絵を見たことがないと知った。それなのに嫌いとか言ってたのか。ごめんなさい。

で、すごいのだ。

あべさんの絵ってすごいのだ。
動物がそこにいる。あきらかにいる。たくさんの人が言ってることがいまわかった。
動物描かせたら他の追随を許さない。
あんなラクガキみたいな絵なのに(失礼)、まさに動物のドクドクいう鼓動とか、ごわやわな毛並みとか、くさそうな息とか、触れたいけど触れることをためらわさせる動物の妙な威厳とか、そういうものを感じる。

あ、もちろん写実的な絵もある。これはまたすごい。
そしてその中間のデフォルメ絵がさらにすごい。
マンガ的なものとリアルなものとちょうど中間の動物絵を描かせたら、この人の右に出る人はいないと思う。
どこを強調してどこを省略するか。対象の本質をつかんでいないと選択できません。
マンガみたいな絵柄でありながら嘘くささが微塵もない。これってやっぱし飼育員歴がものをいってるんだろう。

動物が好きで、でも節度をもって厳しく接してきた人なんだろうなあと思う。
「動物ってかわいいよね」とか「絵の技術探求してます」な方には好みがわかれるところだと思うが、動物園とか野生動物とかが好きな人にはひじょうにオススメの一冊である。つまり私にオススメか。


旭川市旭山動物園 公式サイト
http://www5.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/
 

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2008年08月29日

5ミリの勇者たち。

■バグズ・ワールド(2008/08/09)

バグズ・ワールド-ミクロ大決戦- [DVD]バグズ・ワールド-ミクロ大決戦- [DVD]
ドキュメンタリー映画

エイベックス・マーケティング 2008-12-19
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★★★★☆

200万匹のアリvs2000万匹のアリ!
要塞は完全に包囲された。

 などなどのキャッチコピーがあらすじどころか内容のすべてだ。以上。とか言ってで終わらせるのは自分の意志で行っているこのサイトの存在意義を否定するものである。別に否定するのも個人の自由だけども。ともかくそれ以上でも以下でもないネイチャー・ドキュメントである。
 シロアリがある月夜に一斉に巣立ち、婚姻し、子を産み、育て、巨大な蟻塚という帝国を築く。そして訪れる自然と外敵の数々の驚異。しかしそれらすべてを撃破、克服して、やがて旅立つ次世代のシロアリ王子とシロアリ姫。というお話。
 
 暴風雨。蟻塚はびくともしない。しかし落雷、蟻塚の隣にそびえる大木が蟻塚の上に倒れる。倒壊する蟻塚、燃える大木、迫る熱風。しかし雨は止み、火は収まり、危機は一応脱する。と思ったら大雨、補修中の蟻塚内が大洪水大決壊、女王アリの胴体まで水が達した。女王はもはや単なる子孫(タマゴ)製造マシーンと化し、つまりは超肥満の人間を想像してもらいたい。動けないのだ。どうする。
 というところで太陽が顔を出し水が退いた。帝国は落ち着きを取り戻した。そんななか密かに近寄る驚異があった。何でも食い尽くす、彼らの通った後は草も残らない(嘘)という2000万匹のアリがエサを求めて帝国に忍び寄っていた。ていうかこのアリがヘビとか仕留める映像があった。ホントにすごい。そしてこのアリが本来正面突破では難攻不落の帝国を通常ではあり得ない上空から攻める。つまり倒木からだ。落雷にそんな伏線があったのか。

 こんなドラマチックな展開が延々と続く。嘘くさい。確かに映像一つ一つは本物だろうが、それぞれの時と場所は映像にあるままなのかと疑いたくなる。そもそも蟻塚の内部もあんな風にしっかりと撮影できるものなのか。おそらく公式サイトには撮影方法は書いているんだろうけど、どうもすべてが嘘くさい。

 それがどうした。

 嘘くさいからどうした。それでもこの映像は一見以上の価値がある。そもそも自然とか野生てのは人間から見たらできすぎの嘘くさいことばっかりだ。たとえこの映像が作為あるご都合主義だとしても、いわゆる「自然界の絶妙なバランス」という表現で私は納得する。自然の驚異の一端を窺い知れると言うだけで私にとっては良い映画。要するに他の人はどう思うか想像できません。

 しかしシロアリの女王は本当にグロすごい。どんな映画やマンガのモンスターよりも迫力がある。なんなんだ自然って、人間がつくるものなんてまったく敵わねえ。


映画「バグズ・ワールド」公式サイト
http://www.cinemacafe.net/official/bugsworld/


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アース スタンダード・エディション ホワイト・プラネット 皇帝ペンギン プレミアム・エディション WATARIDORI スタンダード・エディション ブルー・プラネット THE DEEP バグズ・ライフ

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ラベル:動物

2008年06月29日

カーニバル

身近なムシのびっくり新常識100 いもむしが日本を救う? めったに見つからないカブトムシ?(サイエンス・アイ新書 64) (サイエンス・アイ新書 64)身近なムシのびっくり新常識100 いもむしが日本を救う? めったに見つからないカブトムシ?(サイエンス・アイ新書 64) (サイエンス・アイ新書 64)
森 昭彦

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 夏が本格的に来る前に。

 ムシなんて、ちょっと意識を向ければ数え切れないほどの数が身の回りにいる。でもいつの頃からかその存在に気づかなくなってた。
 子どもの頃はどれほどのムシと遊んだことだろう。ダンゴムシを転がしたり、幼虫をポケットに詰め込んだり、カマキリにバッタをあてがえたり、カブトムシをかまぼこ板のタワーの中に入れ、それを崩壊させ、瓦礫の中から生還する彼に興奮したり。言うまでもなく今思えば残酷な行為をさんざん行った。ムシと密着した生活だった。
 しかし大人になるにつれムシにふれることが怖くなって、無視して、忘れた。

 同じ頃、動物、いわゆるほ乳類やは虫類にも興味をもっていた。しかしそれも大人になるにつれて忘れていった。

 学校や雑誌やテレビなどで、動物もムシも私たちと同じ生き物であり生命だと学んだ。「宇宙船地球号」だの「地球のために」だの「生命の重みはいっしょ」だのというアレだ。これは大事なことだしそれなりに真剣に受け止めてはいたが、今の思いとはちょっと違う。


 去年、到津の森公園という動物園の年間パスポートを気まぐれで購入してちょくちょく通うようになった。すると、動物について植物について、そして最近はムシについて、それまでより少し、それぞれをじっくりと見つめるようになった。

 生命に上等とか下等とかないってよくいうよね。一寸の虫にも五分の魂というのと同じ地平の考え方で、生命の重みは一緒ということだと思う。でも僕自身の捉え方はちょっと違う。
 僕にとっては、比較すること自体がバカバカしいという程度の意味だ。
 自然ってのは人間の意図を超越したところにある。ただ在る。ただ生きている。それだけだ。単なる事実。ここに意図とか目的とか介在する隙間なんてないよ。彼らはただ「在る」だけだ。自分も他人も過去も未来もなく、ただ、在る。

 自分とか他人とかそういう感覚は人間だけのものだと思う。これは自然の中にひとりぽつねんと立ったとき、ヒ人が自らを卑小なものと感じる原因でもある。僕が思うには、大自然の大きさを認識できる、つまりその観念をその身に内包できるという点は、人の心の無限大性の証明なんだけどそれは別の話か。

 ともかく動物園に通い始めて、ムシってすごいってことにいまさら気づいた。しかしそんな感覚を他人に伝えるのは難しい。そこでこの「身近なムシのびっくり新常識100」だ。やっと本の話に(笑)
 こういうとき科学的データというのは便利だ。みんなが一応は同じ物差しで物事を見ることができる。つまりムシの驚異(の一端)がわかりやすく提示できる。

 たとえばクモの糸。この強度と柔軟性は防弾チョッキに使われる合成繊維より5倍も優秀で、しかもその糸は不要になったら食べたあと30分で再生可能である。
 シャクトリムシは、自分がいる樹木と同じ成分のワックスを身体から分泌し、嗅覚で獲物を探すアリがその体の上を歩いても気づかないほどの高性能ステルス機能を持っている。しかも樹木が変われば、そのワックスも取り替える。
 ウジムシは壊死した組織だけを溶かして消化し、その排泄物は各種感染を防ぐ物質である。実は戦争で負傷した際、すぐ手当てされた兵士より、傷口にウジがわいた兵士のほうが快復する可能性がずっと高い。
 ムシの完全変態は想像以上の驚異だ。幼虫は栄養摂取に専念する「歩く腸」であり、やがて蛹になったら生命の錬金術だ。分子レベルの劇的変化、神経や内臓までドロドロに溶けて成虫に生まれ変わる。

 こんな話が延々と続く。


 興味がわいたならこの本でもいいし、他の図鑑でもいいし、ちょっと読んでみたらどうでしょう。そうして今一度身の回りにいるムシを見てください。生命の多様性と迫力に、ドキドキしておもしろくってしょうがなくなりますよ、きっとね。


関連記事
「みんなが知りたい動物園の疑問50」

ラベル:動物

2008年02月18日

戦え動物園

 動物が好きだ。このブログのカテゴリーにも動物の項目をつくるほどに。もう誰にも止められねー。
 とりあえず最近読んだ本の内容を書き留めておくことにした。誰にも求められてねー。


旭山動物園の奇跡旭山動物園の奇跡
SPA!編集部

扶桑社 2005-04-19
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★★★★☆

 旭山動物園を紹介した本だ。カラー図版も多くデザインもスマートで読みやすい構成だ。気軽に読める。
 サブタイトルに「日本最北の弱小動物園が日本一になった感動秘話」とある。帯に「ペンギンが“空”を飛んだ!」とある。単なるファンブックみたいな薄っぺらい印象を与える。
 しかし内容はしっかりとしていると思う。しかも取り扱っているエピソードが幅広い。旭山動物園について知りたいなら、この本からスタートするのが良いであろう。で、誰が知りたいのか。
 旭山動物園関連の話はこの本から引用されているものをよく見かける。いわゆる公式的な本なんだろう。知らないけど。

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「旭山動物園」革命―夢を実現した復活プロジェクト (角川oneテーマ21)「旭山動物園」革命―夢を実現した復活プロジェクト (角川oneテーマ21)
小菅 正夫

角川書店 2006-02
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★★★★☆

 旭山動物園の現園長小菅正夫氏の著作。
 内容としては、読者みんなが求める旭山動物園の歴史を押さえながら、小菅氏の人生観があったりする。その他に組織論、動物園の存在意義と現在の情勢と展望など、現場視点を越えた経営者的なマクロ視点が際だつ。そこでこの本は「ビジネスにも役立つ」的な扱いを受けることがあるが、くそくらえ。
 この本は、やはり動物と自然について書かれた本だ。動物園の本、いのちの本。いのち、生きるとし生ける存在に対する真摯な姿勢があふれている。「動物園なんかいらない」という声は昔から多くある。本当にそうか。それは真剣に動物を見て、真剣に考えた結果なのか。私はってーと、ますます動物園が好きになりました。(なり過ぎ)

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動物と向きあって生きる―旭山動物園獣医・坂東元動物と向きあって生きる―旭山動物園獣医・坂東元
坂東 元

角川学芸出版 2006-08
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★★★★★(満点)

 数々の行動展示を生み出した旭山動物園の獣医であり副園長、板東元氏の著作だ。
 この本は危険である。
 帯には「全国学校図書協議会選定図書」とある。本を開くとすべての漢字にふりがながふってある。ああ、なるほど。旭山動物園のサイトでも板東さんのコーナー「ゲンちゃん日記」は、基本的に気軽な内容だもんな。とか思ってたらとんでもねー。
 誰だコレを「全国学校図書協議会選定図書」とかにしたやつは。子どもにこんな刺激的な内容を読ませて良いのか。いや逆だ。この本を選んだヤツはファインプレーだ。子どもにこそ本物を、だ。
 こんなにも動物に、いのちに、厳しく容赦なく真剣に正々堂々と向き合ってた男がいたのか。
 動物に対するあまっちょろい考えをコテンパンにぶちのめされた。
 こんな男たちがつくったのが旭山動物園なのか。旭山動物園、行きてー。誰か連れてってくれ。

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戦う動物園―旭山動物園と到津の森公園の物語 (中公新書)戦う動物園―旭山動物園と到津の森公園の物語 (中公新書)
島 泰三

中央公論新社 2006-07
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★★★★★(満点)

 旭山動物園長・小菅正夫氏と、到津の森公園長・岩野俊郎の対談を、岩野氏の実兄で霊長類学者・島泰三氏がまとめたもの。
 旭山動物園はともかく、到津の森ってなんだってことだよな。
 到津の森とは、もともと西日本鉄道が経営していた北九州市内の遊園地だ。「いとうづゆうえん」と言った。遊園地ではあったが動物も多彩であった。しかし2000年に経営難から一度は閉園した。しかしながら市民活動により、市が買い上げ再び開園したという経緯をもつ。「閉館寸前」だった旭山より、ある意味ドラマチックな歴史であるよ。
 この両園の園長同士は実は30年来の友人であったという。
 北九州市民にとってこの本は嬉しい驚きに満ちていると思う。「いとうづゆうえん(到津の森)」におそらく日本で最も近いところにすんでいた私にとっても同様だ。
 北九州市民は「いとうづゆうえん」とその経緯を、いま改めて見直したらいい。九州厚生年金会館が潰れるからって署名集めて、結局市が2009年までに買い上げると言うが、いいのかそれで。単なる同情じゃあアンタ、閑話休題。
 この本を読んで、旭山動物園や旭山関係者の発言に納得いく理由がわかった。そして私が到津の森に魅せられてやまない理由もわかった。旭山も到津も同じ穴にいた。
 市民のこと、行政のこと、動物園のこと、いのちのこと、読みながらいろいろ考えた。こんなにも早く読みたくて、読み終わることに悲しくなる本は久しぶりだった。



 読み返したら、本の内容なんか書いていないことに気づいたがまあいいや。



関連記事
「旭山動物園のすべて」「みんなが知りたい動物園の疑問50」

旭山動物園 公式サイト
http://www5.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/
到津の森公園 公式サイト
http://www.kpfmmf.jp/zoo/
ラベル:動物 旭山 到津

2008年02月06日

主演:46億歳、地球。

■アース (2008/1/29)

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地球 アラステア・フォザーギル

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★★★★☆

 動物の生態を見せるドキュメンタリーである。はっきりいって素晴らしいの一言に尽きる。ぜひ映画館のでかいスクリーンで見たらいい。

 陸上とか海中とかほ乳類とか魚類とか、環境や種別を限定せずに「主演:地球」とブチあげるのがいい度胸だ。天晴。

 北極から南極に南下していきながら動物を追う。だから出てくる動物も多彩になる。
 もちろん「出演者」が多くなればそれぞれの出演時間は短くなる。すると映画としての一貫性は失われ、細切れの映像をつないだだけのツギハギになるかと思いきや、南下という設定がここで活きる。同一のテーマを様々な角度から見せるオムニバスとなる。

 音楽も控えめであるし、渡辺謙のナレーション(日本語版)も最初はクセがあるかと思ったが、聞いているうちに気にしなくなった。

 などという構成云々は実はこの映画の場合どうでもいい。

 地球って、生き物ってすごい。小学生みたいな感想だが、いや本当にすごいとしか。

 何もない砂漠にある時期だけ突如出現する広大な肥沃な湿地帯。それを目指し幾日も歩く【ゾウ】。もうろうとして木にぶつかる【ゾウ】。足のつかない水場で泳ぐ【ゾウ】。【ライオン】と死闘する【ゾウ】。ゾウばっかりだな。
 いやいや、約1万キロもエサを求めて海を縦断する【クジラ】とその驚異的で美しい狩り、ヒマラヤ山脈を越える【渡り鳥】、生涯二度と同じところを歩かないと言われるほど移動する【オオヤマネコ】、何メートルも上の木から飛ぶ訓練としてただ落下して地面に激突する【小鳥】、肥沃な熱帯雨林に生きるゆえ食物さがし以外の、つまり求婚に精を出すことができる【極楽鳥】たち、地面を水平に「飛ぶ」【ガゼル】、それを追う【チーター】とその筋肉の躍動、【オットセイ】を丸呑みする【サメ】・・・。他にも【トナカイ】、【サル】、【ヒョウ】、【イルカ】、【クラゲ】、【ペンギン】、そして大海原を泳ぐ【ホッキョクグマ】などなど枚挙にいとまがない。
 そしてその背景には、これも驚愕の大自然が広がるのだ。

 ほんとどうやって撮ったんだ、この映像は。

 とはいえ残念なことが一つある。それは特に映画のエンディングに顕著なのだが、環境問題を露骨に言葉で問うていることだ。
 もちろんそれは大事なことだ。今、ここで、私たちが必死に考えなければけない課題だ。
 けどな、とってつけたようなんだよ。あえて言葉にしなくても良かった気もする。

 この映画のコピーに「生命のパレード」というのがあった。このスタンスで良かったのではないか。
 生命を伝えることは尊さを問うことだけではない。「自然」を目の当たりにするだけで自ずから感じる生命もある。
 なんとすごいんだ。なんという力、なんという優しさ。なんという残酷さ。ああ、これが生きるということ。生命というもの。
 親しみが興味を誘い、彼らを大事にしたいと思う心を誘う。それが生命なるものを大切に思う気持ちを生む。と思う。

 「アース」の素晴らしさはその映像の見せ方だ。動物や自然の、つまり地球の魅力に気づかざるを得ない映像なのだ。
 だからこれを見たあとは、隣の家のイヌとか道を歩いているネコとか玄関にいるサカナとかが異様に目にとまる。そして思う。

 すげー。

 驚異の生命が溢れているのは、人のいない大自然の中だけではない。


関連ページ
「WATARIDORI」「ディープ・ブルー」「皇帝ペンギン」「ホワイト・プラネット」「旭山動物園のすべて」

映画「アース」公式サイト
http://earth.gyao.jp/
ちきゅうGyaO(2008/2/28まで「アース」メイキング公開中! 撮影方法の一部が明かされている!)
http://eco.gyao.jp/

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ラベル:動物

2008年01月21日

命ってね、温かいんだよ。

■奇跡の動物園 〜旭山動物園物語〜 (2006)
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山口智充, 戸田恵梨香, 小出恵介, 利重剛

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★★★☆☆

 2007年の年末に広末涼子が出ていた第2弾のほうを再放送していたので知ったドラマです。こんなドラマあったのか。
 旭山動物園の成り上がりストーリーのドラマ化です。なんでも商売にできる。ちなみに第1弾は成り上がるまでの2004年くらいまで、第2弾は成り上がったあとの現在(2007年)までのおはなしです。

 旭山動物園とは日本最北にある動物園で、動物を従来にない発想で一見奇抜に、しかしその能力や行動をわかりやすく客に提示する「行動展示」で、閉館寸前の状況から入館者数日本一にまでなった動物園である。が、そんなことは私より世間の方が承知だろうに。

 一般向けの、つまりは子どもやそれを取り巻く母親たちをターゲットにしたドラマである。はっきり言ってディティールは甘い。つまり髪の長い女スタッフが髪をまとめず作業をしたり、スタッフの数の異様な少なさとか、いわゆる「嘘」が多い。実話を元にしたであろうこの物語でそれは致命的ではないのか。
 また、ひとつひとつのエピソードの掘り下げも甘い。これは10年以上の時間の流れを、つまりどん底から日本一への軌跡、その特徴的な逸話を限られた時間ですべて描かなければいけないということもあっただろう。
 主演の山口智充をはじめ、津川雅彦、伊東四朗、荒川良々など、役者は個人的には大好きな人たちが多数出演している。彼らの動物園マンとしての矜恃と、それを体現する「理想の動物園」を目指す数々のエピソードは確かに心震えるものばかりだ。
 しかしながらいずれにしても、作品としては破綻しているところが多いのも事実なんだよな。

 ところが私はこのドラマが好きなのだ。それもどうしようもなく。
 それは登場する舞台は本物の旭山動物園で、動物たちは本物の動物たちだからだ。ドラマのデキがどうであれ、本物の動物園と動物たちが画面の奥から放つ力は圧倒的だ。本物の動物園は本物の動物園マンたちの思いが込められたまさにそのものだし、動物にはもちろん演技なんかない。感動するように仕組まれた台詞、カメラワーク。すべてが演出だとわかっていても、いつのまにやらこみあげる感情がある。

 旭山動物園が伝えたいのは「命」。これは常から旭山動物園が謳っていることである。
 おそらくドラマでも伝えたいのは「命」。細かい仕事の内容やその正誤を言いたいのではなく、伝えたいのはその根本だけなのだろう。

 熱い思いは受け取った。(一方的に) 良いドラマである。


関連記事
「旭山動物園のすべて」

旭山動物園 公式サイト
http://www5.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/

奇跡の動物園2007~旭山動物園物語~奇跡の動物園2007~旭山動物園物語~
山口智充 小出恵介 荒川良々

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ラベル:動物 旭山

2008年01月12日

動物たちの鼓動が聞こえる

■旭山動物園のすべて

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★★★★★

 視聴率をとるためには子どもと動物。てことはいまや私たちテレビの素人でももはや当たり前すぎて言われないどころか、それを周知で受け入れることこそ大人の寛容の表れと言われている。知らないけど。その動物がたくさん出てくる。シロクマとかペンギンとかアザラシとか。

 ところで映像の舞台となっている旭山動物園は奇跡の動物園といわれている。入館者数の減少から閉館寸前まで追い込まれたが、いまやその入館者数は日本一となったからだ。日本人はこういう努力と根性の成り上がりが普遍的に好きだ。

 「熱血」を「カワイイ」のオブラートで包んだこの作品がおもしろくないわけがない。ふん。

 なんてヒネた態度で臨んだ私が馬鹿だった。なんだこれ、おもしれー。

 正直、旭山動物園の「行動展示」なるものを見くびっていた。やはり動物に携わる方々の思いは、我ら一般人の及ぶところではない。「行動展示」は動物の持つ素晴らしい能力を伝えたいという気持ちから生まれた発想というのは聞いていたが、エンターテイメントすぎて、さらなる刺激を求めすぎて、結局尻すぼみしてしまうんじゃないかと思っていた。甘いなあ、私。

 動物たちの能力のすばらしさはきっと色褪せることはない。ただの檻にいる動物でさえ、それを眺めていて飽きることがあるか。
 飽きるという人は本当に動物を見ていたか思い出して欲しい。旭山動物園の園長によると、動物を見る時間は一つの檻で平均2.6秒なんだと。これは閉館寸前だった時点での旭山動物園のデータだと思うが、たぶん今でもどこの動物園でも似たようなものだと思う。私はけっこう動物が好きで動物園(到津の森公園)には比較的よく行っています。それで5分どころか30分とか下手したら1時間くらいはひとつの動物の前にいたりすることもある。そのとき、周りの方々の動物を見る時間の少ないこと。2.6秒とは言わない。でも10秒、30秒見る人もけっこう少ない。1分もいるのは皆無に近い。

 奇抜でもなんでも、一度動物の魅力を伝えることができれば、あとはもう泥沼だ。
 一度伝わってしまうと、もう行動展示の力を借りる必要すらない。生き物のおもしろさがここにある。すべてが予測不能のおもしろさがある。万が一予測できても幻滅しない心の高揚を得られる。赤ん坊をいつまで見ていても飽きないあの感じとちょっと似てる。
 行動展示の驚嘆すべきところは、動物の能力を意識しないでもたやすく我々に気づかせることだ。ただしカッコイイ展示方法ばかりに目を奪われて、逆に動物が見えなくなることもあるかもしれん。いや、そうはならないか。

 だってスタッフが素晴らしい。それぞれの行動展示の構想から展示開始までの期間も驚異的な短さだし、水槽の中や檻の中にいても、キャプションを持って来館者と会話しながらちょっとした学びを入れたり、動物の本能を利用したちょっかいをかけて動物をダイナミックに動かしたり、企業努力も並じゃない。
 いやそれは確かに組織としての努力でもあるのだろうが、動物を愛する者として、動物のすごさを伝えたい、ただそれだけの気持ちかもしれん。そう思わされる憎らしいほどみんな良い笑顔なのだ。


 旭山動物園は決して単なる楽しい休日の遊び場ではない。動物のかわいさや温かさや強さや優しさや冷酷さ弱さや汚さや臭さとかそういったいろんなもの、つまり自然、命そのものを伝えようとしてるってことがよくわかった。


 旭山動物園に行きたいなあ。ツアーをいくつか見たら3時間のコースとかわりかしあるのね。バーカバーカ。3時間で回るれるかよ! このDVD見ただけでも4泊5日は必要だと思ったのに。終日自由行動で。
 しかし、この映像にまだ映っていないところがあったら、いやあるんだろうが、それなら4日間くらいじゃ回れねー。1週間いる。あとせめて夏と冬の真逆シーズンに行きたい。いや通常気温の季節も。てことは春夏秋冬だから、7連休×4=28日間の仕事休みが必要です。

 夢、潰えた。


関連記事
この本も併せて読むとよりおもしろい!ホント

旭山動物園 公式サイト
http://www5.city.asahikawa.hokkaido.jp/asahiyamazoo/
到津の森公園 公式サイト
http://www.kpfmmf.jp/zoo/


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